ピカソとマチス

　ピカソはともかくマチスは、まったくという訳ではありませんが、見る機会はあまりありませんでした。そのため特にこれといった印象は持たずに、というより予備知識なしで見ることになりました。（もっとも私の場合、ほとんどがそのような状況ですが）
　この特別展では、両者の単純な線で構成された肖像を、その元となった素描をも含めて並列して展示しているコーナーがあり、それが特に私の目を惹きました。

　マチスが描いた人物画のデッサン。

　ピカソが描いた人物画のデッサン。

　ピカソの場合は、一連の素描をすばやく、そして一気に仕上げていったようですが、それに対し、マチスの場合は、１回目の素描の後、１〜２日の時間をおき、その間に起こる「無意識の発酵」を待ったとのこと。そして２回目以降は単純な線で構成されていく。そういう経過をたどっていったようです。
　一連の単純な線で構成された肖像画。両者のそれは雰囲気としては似通っているように見えますが、そこに至るまでの過程には大きな差異があるというのです。
　単純なそして数少ない線によってのみ構成されている肖像画であるにもかかわらず、あるいはだからこそかもしれませんが、とても訴えかけるものがありました。

　最後に私がとても共感を覚えたマチスの言葉を。特別展示室の出口に掛かっていた垂れ幕に書かれていたものです。
　この言葉と同じようなことを、私も感じたことがあります。

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　礁湖

　あなたは画家たちの楽園の七不思議の一つではないでしょうか。

　心から、ひたむきに”歌う人たちはしあわせだ”。

　喜びを空のなかに、樹々のなかに、花々のなかに見出すこと。見ようとする気を起こしさえすれば花はいたるところにある。

　―アンリ・マチス『ジャズ』（1947年）より

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